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車窓は天然の地質博物館�@

理科 全学年 2026/10/27

(前回の内容はコチラ)

車窓は天然の地質博物館 ―グラナダからコルドバへ,日本の「当たり前」を問い直す大地の授業―

桃山学院大学人間教育学部 特任教授 川真田 早苗

■思わず撮り続けた車窓

 2025年9月,スペイン南部アンダルシア地方もグラナダからコルドバへ,バスで移動しました。約200kmの道のりで,私は車窓にカメラを向け続けていました。白い岩肌がむき出しの岩山,その麓を埋めつくすオリーブ畑(図1),燃えるような赤い斜面(図2),そして道路脇に切り立つ白い崖(図3)。数分走るごとに,景色ががらりと変わるのです。日本の道路では見たことのない風景に,何度もシャッターを押しました。
 生徒にこれらの写真を見せて,こうたずねてみてください。「日本の道路から見える景色と,どこが違いますか」。

(図1)石灰岩の岩山とオリーブ畑

(図2)赤い地層の斜面

■日本の車窓が見せないもの

 生徒からは「緑が少ない」「岩が見えている」「コンクリートがない」といった声が出るでしょう。実は,日本の大地もプレートの境界に位置し,世界有数の複雑な地質をもっています。それが車窓から見えにくいのは,大地が二枚の「ベール」に覆われているからです。
 一枚目は緑のベールです。グラナダの年降水量は約365mmですが,東京は約1,600mm,金沢は約2,400mmもあります。豊かな雨は森林と厚い土を育て,地層の境目を覆い隠します。二枚目はコンクリートのベールです。雨が多く地震も多い日本では,崩れるおそれのある斜面をコンクリートなどで固め,私たちの安全を守っています。アンダルシアの車窓は,このベールがない大地の姿を見せてくれるのです。

(図3)道路脇の白い石灰岩の崖

■景色でがらりと変わるわけ

 では,なぜ景色が短い距離で変わるのでしょうか。この地域では,大昔に山地から滑り落ちた硬い石灰岩の大きな岩塊が,軟らかい赤い粘土や砂岩の地層の中に取り込まれています。軟らかい地層は雨や風で削られてなだらかな丘となり,オリーブ畑になりました。硬い石灰岩は削られずに残り,白い岩山として突き出しています。性質の違う岩石の境目を次々に横切るため,車窓の景色が次々に変わるのです。赤い色は,岩石や土に含まれる鉄が酸化した色です。
 オリーブ畑にも目を向けてみましょう。木と木の間の地面には,草がほとんど生えていません(図1)。少ない雨水を雑草に奪われないよう,草を取り除いているのです。しかしその一方で,むき出しの土は冬の強い雨で流されやすく,この地域では畑の土が失われることが問題になっています。人間の土地の使い方も,大地の姿を変えていくのです。


【授業のヒント】
・中学校第1学年「大地の成り立ちと変化」の導入で,写真を見て「見えたこと」と「考えたこと」を分けて書かせると,観察と推論の区別を意識させることができます。
・「もしグラナダに日本と同じ量の雨が降ったら,この景色はどう変わるか」と仮定の問いを投げかけると,気象と大地の変化を関連付けて考えることができます。
・図1と3の白い岩,図2の赤い岩を比べ,「硬さの違いが地形の違いになる」ことを,削られやすさの予想から考えさせることができます。


 ところで,この200kmの道のりで,私は日本では当たり前のものを,ほとんど見かけませんでした。次回は,道中でたった一つだけ見つけた「擁壁」から,雨と地震の関係を考えます。

<引用文献>
AEMET(スペイン気象庁):Valores climatologicos normales, Granada Aeropuerto(1981-2010). https://www.aemet.es/
気象庁:過去の気象データ検索(平年値1991-2020). https://www.data.jma.go.jp/
UNED(2017):Geolodia 17 Cordoba ガイド. https://extension.uned.es/
Gomez, J. A. ほか(2014):Olive Cultivation, its Impact on Soil Erosion and its Progression into Yield Impacts in Southern Spain in the Past as a Key to a Future of Increasing Climate Uncertainty. Agriculture, 4(2), 170-198.

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川真田 早苗(かわまた さなえ) 博士(学校教育学)
1964年生まれ
小学校教諭として34年間徳島県の公立中学校に勤務
1986年 徳島学大学教育学部 小学校教員養成課程卒業
2018年 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科 教科教育実践学専攻(博士後期)課程修了
現 職 桃山学院大学人間教育学部 特任教授
趣 味 砕石ガーデンでも花畑ができるかなと思い立ち庭いじりが趣味となりました。砕石を敷いた庭に,前年度に収穫した数種類の種子を適当に蒔き,砕石の間からどんな種子が発芽するのかをわくわくしながら観察しています。今は,スイートピーが花盛りです。

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