中学生エデュフル

授業力をみがく

ICTを活用したこれからの理科教育(2)

理科 全学年 2021/3/9

東京大学 教授 大矢 禎一

(前回の内容はコチラ)

3 生徒が活用するICT

C情報収集

 学校でのICTの環境整備が進んだ場合に、生徒が受ける大きなメリットが、インターネットを利用した情報検索です。予期せず学校が長期休校になり、家庭で学習せざるを得ない状況が続くと、セキュリティや教育上の理由によるファイアウォールを設定できないために「不適切な情報の収集」が行われることが心配されます。』
 情報収集とともに、ますます重要になってくるのが情報活用能力の育成です。大人でも、仕事を上手にこなせる人は、必要な情報をいち早く取ってきて、状況に応じて情報共有したり、編集・加工したりすることが上手にできます。これからのSociety 5.0時代には、教科の枠を越えて情報活用能力の教育が重要になってくることは間違いありません。


D知識の定着

 学習内容のクイズや基本のチェック、問題が解けるかどうかの力だめしは、問題集やプリントを使ってアナログ的に行われていますが、PCやタブレットを使ってそれを学習ソフトやインターネット上で行うことも可能です。しかし、学校の定期試験や入学試験は、今のところパソコンでの入力ではなく、筆記で行われるので、完全にアナログ方式がなくなることはないでしょう。PCやタブレットを使うと繰り返し学習や弱点分析などが容易になり、確かに便利ですが、やはり鉛筆やペンを使った学習も大切です。また、モデルやシミュレーションを使ったアプリも知識定着には有効だとされています。

E結果の整理

 結果を整理するときにも、PC やタブレットを利用することができます。インターネットを使えば、結果の整理を他の生徒と協働して行うこともできます。これには、ワープロ・表計算・プレゼンテーションといったアプリケーションが組み合わされたいわゆる「オフィスソフト」を使うことになりますが、これも理科だけでなく、教科の枠を越えて使い方の学習が必要です。2015年に国が実施した調査によると、小学5年生の児童はキーボード入力が平均1分間に5.9文字しか入力することができなかったということですので、まずはここから状況を変えていく必要があるのではないでしょうか。


F説明、発表

 個人やグループの学習成果をクラスで発表する際も、ICTは有効です。発表する際には自分の言葉で表現することが必要ですが、他人が理解しやすい発表をするには、一定のフォーマットに合わせた方がよいかもしれません。そのようなフォーマットをベースに発表資料を作ることで、他のグループの発表と比較することができます。発表資料が残ることも、ICTの利点の一つです。


---------------------------------

大矢 禎一(おおや よしかず)(東京大学 教授)

1959 年兵庫県宝塚市生まれ。東京大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。理学博士。東京大学理学部助手、助教授を経て、1999 年より東京大学学院新領域創成科学研究科教授。専門は分子生物学。一般財団
法人 理数教育研究所 Rimse 理事。

この原稿は、「学びのとびら」2020年春号に掲載された内容を一部改変したものです。

アンケート

よろしければ記事についてのご意見をお聞かせください。
Q1またはQ3のいずれか一方はご入力ください。

Q1:この記事は授業準備のお役に立ちましたか。
Q2:この記事の詳しさは適切でしたか。
Q3:その他、ご意見・ご感想をお聞かせください。

全角で512字まで入力できます。