授業力をみがく
ドイツの教科書は、イラストでいっぱい!
大垣女子短期大学 幼児教育学科 講師 岡本 英通
ドイツの算数の教科書を眺めていると、いろいろなイラストが目に飛び込んできます。学年が上がるほどその数は減るかと思いきや、どのページにもイラストはあり、見ていて楽しいです。そうしたイラストがあることで、日本の教科書と比べると、文字が小さいなと思うこともあります。その点では、大きい文字で見やすさを考えてある日本の教科書は、文字認識に関してユニバーサルデザインが意識されていると感じます。
図形領域の範囲になると、よりイラストや図が中心の構成になります。下の2枚の画像は、ドイツの小学3年生の教科書です。いかがでしょうか? 1枚目の教科書の見開きには、色鮮やかに、立体が表現されています。問題文は、小学3年生にとっては字が少し小さいような気がしますね。

図1 Cornelsen社の第3学年対象の算数の教科書抜粋

図2 Cornelsen社の第3学年対象の算数の教科書抜粋
2枚目の画像に注目すると、日本の教育内容ではあまり取り扱わない問題が出題されています。積み木の見取り図から、立方体の木がいくつ見えて、いくつは確実にあり、いくつある可能性があるかを考える問題です。脳トレのような問題ですね。例題では、9つの木が見えますね。二段目の左の2個は必ず下に一段目があるため、11個は確実にあります。そして、奥の見えないところに2個あるかもしれない、と示されています。こうした、頭の中で立体をイメージする活動は、日本の教育内容に少ないとは思いませんか? ドイツと比べると、日本は空間図形の学習が段階的に行われているとは言い難い状況です。そのため、中学・高校で立体や空間ベクトルの学習でつまずきが生まれてしまうのではないかと考えることができます。たまには、空いた時間で図2のような問題を生徒に考えさせてみるのも、いい気分転換と空間図形の学習になるかもしれませんね。
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岡本 英通(おかもと ひでみち)
1993年生まれ
岐阜県内の公立小・中学校(数学科)を通算で4年間、教諭として勤務
2018年 岐阜大学大学院 教育学研究科総合教科教育専攻 サイエンスコース 数学(修士課程)修了
2023年 カールスルーエ教育大学(原文: Padagogische Hochschule Karlsruhe, ドイツ) 自然社会科学数学科後期課程修了
2023年 博士(哲学)カールスルーエ教育大学
現 職 学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学幼児教育学科 講師
専 攻 数学教育学,創造性・創造的思考,遠隔協働学習
※Padagogische Hochschule Karlsruheの“Padagogische”のはじめのaは上部に‥がついたもの。文字化けを避けるためこの表記にしております。
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