中学生エデュフル

授業力をみがく

授業をデザインする(3)思考活動を促す「発問」

理科 全学年 2023/12/19

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明

(前回の内容はコチラ)

 授業の展開は,多くの場合,「発問」から始まります。よい発問は生徒の疑問を誘発し,学ぶ意欲を高めることができます。今回は,この発問を考えてみましょう。

 よい発問を生徒に提示すると,生徒は知っている知識を総動員し,個々の思考をフル回転させながら,ああでもない,こうでもない・・と多様な考えや答えを引き出そうとします。では,このような思考活動を促す発問は,どのように設定すればよいでしょうか?

 例えば次の図のように,生徒が知っている内容に発問を落とすと,即答されてしまい,授業の展開はつまらなくなってしまいます。また,生徒がまったく知らない内容に発問を落とすと,生徒にとっては思考する材料がないので,あてずっぽうで答えるしかありません。例えば,“クリオ語(シエラレオネ共和国:西アフリカ)で「りんご」は何と言いますか?”と問われても,私たちは困ってしまいます・・・。よい発問は,生徒の既知と未知の間に設定すると,思考活動を促す良質の問いとなります。よい発問を設定するためにも,生徒の実態把握は不可欠です。

 でも,授業中に発問したら,図中の既知や未知の中に落としてしまった・・ということもあります。その場合には,生徒の状況を確認しながら修正することが必要です。例えば,未知の中に発問してしまったら,考える材料(ヒント)を提示して思考できるところまで誘導しましょう。また,一部の生徒が未知の中に入っている場合には,その生徒に「ヒントカード」を渡すことができるよう,準備をしておくことも効果的です。それでも学級全体の思考が進まない場合には,いくつか選択肢を提示することで,考え方や思考の方向を示してはいかがでしょう?

 一方,既知の中に発問した場合にも修正が必要です。特に,生徒の中には塾で学習した・・という生徒もいます。でも,塾で学習した・・と答える生徒の多くは,塾で知識や情報のみを得ていることが多いので,「それはどうして?」と説明を求めたり,根拠をたずねたりすることで疑問を誘発させ,思考活動へと誘うことができる場合もあります。このように既知の中に発問した場合には,授業の目標を上方修正することも視野に入れて,授業プランを変更しながら生徒の力を伸張できるようにしたいですね。


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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