中学生エデュフル

授業力をみがく

授業をデザインする(2)生徒の学習意欲を高めるには導入から

理科 全学年 2023/11/21

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明

(前回の内容はコチラ)

 導入には,1)本時の学習内容を伝える,2)生徒の関心を高め,意欲をもたせる,3)学習の必要性を知らせる,4)既習内容を確認する,等の役割があります。特に,2)は教師の腕の見せ所であり,ここで生徒のハートをわしづかみにできれば,授業はほとんど成功したといってもよいでしょう。一方,導入が生徒にとってつまらないと,後からドラマを用意してもなかなか盛り上がりません。

 では,生徒の関心を高め,意欲をもたせるためには,どのように導入を工夫したらよいでしょうか? 理科の授業は他教科と比べると,導入時に「もの(自然物)」を教室に持ち込んで学習課題に迫ることができます。これを強みに,次のいくつかの視点で工夫をしてみてはいかがでしょう?

@身近なものを,意外な方法で使う
 例えば圧力の導入では,紙コップを10個程度ふせて並べ,その上に板を置いて乗ったらどうなるか問いかけて演示します。上手に乗れば,紙コップ3個でも60kgの体重を支えることができます。実験前に,紙コップを手で潰したりすると効果的です。

A身近でないものを持ち込み,特別感を高める
 例えば電流の導入では,誘導コイルに電流を通したり,放電している間に紙を差し込んで着火させたり(感電しないよう手は近づけないで!)すると,生徒は驚きます。理科室にある等身大の骨格標本も,導入で紹介すると人気者になります。(ただし,年代物は骨折したり関節が外れたりしていますので,紙粘土や接着剤で事前に修理しましょう)

B瞬間的な変化を伴う事象を持ち込む
 生徒は発光,爆発,変色などが大好きです。例えば水素のボンベの先に石けん液をつけてシャボン玉をつくって着火したり(引火しないように注意!),指示薬による反応をマジックショー的な演出にしたりすると,生徒の関心は一気に高まります。

C五感(正確には視覚,聴覚,嗅覚の三感)に訴える自然事象を持ち込む
 例えばアンモニアなどの強烈な臭いは,インパクトがあります。アンモニア水を紹介し,匂い方を指導した後で勇気ある生徒に嗅いでもらう(強制はダメです!)と,クラス中がその反応に興味津々になります。

D緊張感のある自然事象を持ち込む
 上記の内容は,どれもハラハラ,ドキドキ,ワクワク等,心が動く教材です。安全に十分配慮して演示すると,どれも効果的な導入になります。

Eどうしても困ってしまった場合
 安全な範囲内で自然事象を巨大化してはいかがでしょう。例えば力学的エネルギーの学習の導入では,いつも天井から水の入ったバケツを吊り下げてふっていました。

 最近,4)についてもICTを活用すると楽しい導入ができます。例えばKahoot!を使ってはいかがでしょう。内容にもよりますが,単純な暗記であれば復習の時間がクイズ大会になります。チーム戦もできますので,試してみてはいかがでしょう?


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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