中学生エデュフル

授業力をみがく

授業をデザインする(1)時間の短縮はICTの活用から

理科 全学年 2023/10/24

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明

(前回の内容はコチラ)

 今回から数回にわたって,授業のデザインについて考えてみましょう。初回は時間の使い方です。

 1時間の授業50分について,教師の時間,生徒の時間の視点で考えてみると,この時間配分をいつもどのように設定されていますか。ここで,教師の時間とは,教師が導入や説明,発問などの指導・支援に使う時間を指します。また生徒の時間とは,生徒の思考や観察・実験などの活動,結果の発表など,生徒が学びを深める時間を指します。

 教員志望の学生に問いかけると,多くの学生が30分以上は生徒の時間に配分したいと答えます。ところが,学生の模擬授業を教師の時間,生徒の時間の視点でチェックすると,教師の時間が圧倒的に長くなっています。授業をする学生は,わかるように説明をしようと「話すぎている」ようです。

 理想としては,時間をなるべく生徒に渡したいところです。特に,観察や実験には時間がかかりますので,教師の時間はなるべく抑えたいです。でも,説明不足のまま活動に入ると生徒が混乱します。その後は,軌道を修正しようと教師が追加の説明をして,さらに混迷を深めてしまう・・・の悪循環にハマりかねません。

 また,生徒は多様な思考をしますので,想定外の意見が多数出てくると,その後の授業展開で整理が大変です。学生にたずねると,生徒に時間を渡すことには勇気がいる,と答えます。

 では,教師の時間をなるべく減らすには,どのような工夫が考えられるでしょうか。ポイントは,授業デザインをシンプルにすることと思います。私たちは事前に教材研究を深めると,ついつい多くの情報を生徒に伝えがちになります。まずはゴール(学習課題の解決)に向かって一直線に進む授業を組み立ててはいかがでしょう。このとき,電子黒板やデジタル教科書を使い,思考の道筋を可視化しながら進めると,生徒にとっても現在地がわかるので効果的です。

 また,生徒に自分の考えをGoogleのスプレッドシートやスライドなどの共有ファイルに記入させてはいかがでしょう。個人思考・グループ思考,発表が同時に展開できます。このとき,早く記入できる生徒は他の生徒の内容を読みながら待ちますし,記入できない生徒は他の生徒の書き込みを読みながら自分の考えを書き始めます。これまで「紙に書く→グループで話し合う→発表する」は,待ち時間が多く発表者も限られましたが,デジタルを活用すると意見共有までの時間を一気に縮め,生徒の授業参加を促すことができます。教師も生徒が記入する内容をリアルタイムで把握し,整理する方向について作戦を立てることができます。
 ICTを活用して,生徒の時間を多く配分する工夫を進めてみてはいかがでしょうか。


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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