中学生エデュフル

授業力をみがく

指導案作成のコツは板書計画から

理科 全学年 2023/8/29

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明

(前回の内容はコチラ)

 これから秋にかけて,授業研究や公開授業の案内を多く見かけるようになりました。私自身,前任の中学校が研究校だったため,いつも指導案作成に追われていたように思います。

 現場での教育実習や,教員養成で教育実習の学生さんと接していると,「指導案がうまく書けません・・」という声をよく耳にします。自分もそうだったな・・と思いながら様子を見ていると,多くの学生さんは「導入」からプランを立てようとして固まっています。この方法は,あまりお勧めできません。

 授業には,必ず「ゴール」となる「考察」や「まとめ」があります。授業をデザインするには,まず最初に1時間の授業の最終的な着地点を決めないと,ゴールに向かう戦略ができません。また,「生徒の関心が高められる」ことを最優先にして導入から進めていると,ゴールに適した導入かどうかの視点が落ちてしまいがちです。まずは授業のゴールを決めることが先決です。

 ゴールを決める方法として,まず板書計画で授業を可視化してはいかがでしょうか。授業のアウトラインは,板書計画を見るとわかります。いきなり,指導案を導入から取り組むよりも,板書計画を先に作成すれば授業の骨組みができますので,授業の全体像が明確になります。

 板書計画で「考察」「まとめ」にあたるゴールが決まれば,そのゴールが「答え」となるような疑問文を作成します。理科は「問題解決」を柱に学習を展開します。そのため,「学習課題」になる疑問文を設定し,Q&Aを完成させましょう。ここまでくれば,板書計画の「学習課題」と「考察」・「まとめ」ができあがります。「学習課題」をそのまま「主要発問」として指導案の授業過程に記載します。

 「考察」や「まとめ」は,自動的に本時の目標と深くかかわります。設定したゴールを本時の目標にふさわしい表現にして,指導案に記載しましょう。本時の目標ができれば,自動的に本時の目標が達成できたかどうかをチェックする「授業内評価」が決まります。例えば,目標を「〜理解することができる」と設定したら,授業内評価も「〜を理解することができている」などのように,文末表現を統一し対応させましょう。

 このように,板書計画の「学習課題」と「考察」「まとめ」から進めると,「主要発問」,「本時の目標」や「授業内評価」が連動して決まり,授業案の大枠のデザインが完成します。


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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