中学生エデュフル

授業力をみがく

実感を伴った物理量の理解 〜大気圧の測定〜(3)

理科 全学年 2020/3/10

北海道教育大学教授
田口 哲

(前回の内容はコチラ)

 次のグラフは,この方法で,空気が与える力をピストン円形部の面積を変えて測定した結果の一例です(3,5,10,20 mLの注射器を使用)。空気が正味の力を与えるピストン上部円形部の面積は,ピストンの円形断面の直径を定規で測れば求めることができます(ノギスを使った方が正確ですが,その場合は教師が予め測って提示した方がよいでしょう)。例えば,ピストン円形部の面積が0.74 平方センチメートル(3 mL注射器)のとき注射器を引く力はグラフから7.5 Nですので,大気圧は力/面積=7.5N/(7.4×10^(-5)平方メートル)=1.0×10^5 N/平方メートル=1.0×10^3 hPaと得られます。5,10,20 mL注射器を用いても圧力は同じ値が得られます。色々な大きさの注射器で測定を行った後,実際に,生徒に次のグラフをかかせたり,大気圧を計算で求めさせたりすると,実感を伴った大気圧の理解に効果的かと思われます。その際,苦手意識が強いかとは思いますが,面積を求めるときは生徒自身がcmからmへの単位変換を行い,また,単位N/平方メートル=Paの意味(単位面積あたりの力)を意識しながら大気圧を求めることが大切です。

(圧力関係グラフ画像)


 さらにこのグラフから,力の大きさは面積に比例する,すなわち一次関数になっていることがわかります。圧力を学ぶ単元は,1年生の第1分野でしたが,新学習指導要領においては2年生の第2分野へと移行されました。その結果,指導のタイミングが合えば,2年生の数学で学ぶ「一次関数」と関連付けながら結果を考察することが可能です。また,このグラフの直線の傾き(単位あり)が大気圧を表していることを,数学で学んだ内容を活用して考えることもできます。このような簡単な実験も活用しながら,単なる計算問題ではなく“実感を伴った圧力の理解”へと引き上げていただければと思います。



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田口 哲先生
1968年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道大学大学院理学研究科修士課程・同大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。北海道教育大学講師、准教授を経て2011年より現職。専門は物理化学、化学教育。1999〜2001年大学入試センター教科専門委員会委員、2006〜2011年大学入試センター教科科目第2委員会委員。化学教育ジャーナル(CEJ)編集委員。著書「理科教育学−教師とこれから教師になる人のために−」(東京教学社)、「解説実験書 新しい北海道の理科」(北海道教育大学)。電気化学・物理化学に関する論文、化学教育に関する論文等多数。

この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」を一部改変の上,再掲載したものです。

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