授業力をみがく
実感を伴った物理量の理解 〜大気圧の測定〜(2)
北海道教育大学教授
田口 哲
3 大気圧を実感しながら測定する
気圧は,中学校ではアネロイド気圧計で測定することが多いかと思います。また最近では,スマートフォンに気圧センサーが内蔵されていますので簡単に測定することができます。しかし,これら計器での測定は単なる数値の読み取りになりがちで「実感を伴った理解」にはなり難いと思われます。そこで,発展的にはなりますが,バネばかりとガラス製注射器を活用して,空気が与える(分子衝突による)力を実感しつつ大気圧を簡単に測定できる方法を紹介します。
伸縮性のないポリエチレン製テープでバネばかりのフックとガラス製注射器のピストンを繋ぎます。注射器のピストンにはグリセリンを薄く塗り密閉性をよくしておきます。ピストンは注射器の先端まで押し込み,その先端をシリコンキャップなどで閉じます(次の写真参照)。この注射器本体を手でつかんでゆっくり引く際に必要な力,すなわちピストン上部円形部(写真参照)に空気が与える力をバネばかりで測定します(注射器内部は真空)。この際,ピストンが注射器から抜けないように,ピストンを引く程度は,ピストンの先端が注射器の容量の半分の目盛りを指すくらいに止めます。この方法のよいところは,空気が与える力を注射器を手で引くことで実感しながら,その力を定量的に測定できることです。

(圧力実験画像)
(次に続く)
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田口 哲先生
1968年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道大学大学院理学研究科修士課程・同大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。北海道教育大学講師、准教授を経て2011年より現職。専門は物理化学、化学教育。1999〜2001年大学入試センター教科専門委員会委員、2006〜2011年大学入試センター教科科目第2委員会委員。化学教育ジャーナル(CEJ)編集委員。著書「理科教育学−教師とこれから教師になる人のために−」(東京教学社)、「解説実験書 新しい北海道の理科」(北海道教育大学)。電気化学・物理化学に関する論文、化学教育に関する論文等多数。
この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」に掲載された内容を一部改変したものです。
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