授業力をみがく
実感を伴った物理量の理解 〜大気圧の測定〜(1)
北海道教育大学教授
田口 哲
1 はじめに
前回,物理量=数値×単位を意識した指導について解説しました。
今回は前回も踏まえ,圧力,中でも大気圧の測定を例として,実感を伴った物理量の理解について考えてみたいと思います。圧力を取り上げたのは,中学生が難しいと感じている1)ことに加え,圧力の学習が単なる計算問題になっていることが指摘されている2)ためです。
圧力とは単位面積あたりの力ですが,圧力の理解が難しいと感じる理由は,力の大きさと面積の2つが関わり複雑なこと,圧力を求める式の意味がよくわからないこと,さらに記号や単位が加わり複雑なためであることが明らかにされています1)。
2 大気圧についての学習内容
学習指導要領の解説では,圧力が,力の大きさと力が働く面積に関係があることと単位面積あたりの力であることをスポンジを用いた実験で学んだ後,大気圧については,空気の重さと関連付けて理解させることやあらゆる向きから働くことなどを理解させることが求められています。教科書では,地上の大気圧は約1013 hPa=約100000 N/平方メートルであることや(次の図),大気圧によって押し付けられた取っ手付きゴム板で机が持ち上がる様子が示されています。

(大気圧の大きさ画像)
引用・参考文献
1)石井俊行,科学教育研究,39(1)42 (2015)
2)藤垣和之,日本理科教育学会全国大会要項,46,276, (1996)
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田口 哲先生
1968年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道大学大学院理学研究科修士課程・同大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。北海道教育大学講師、准教授を経て2011年より現職。専門は物理化学、化学教育。1999〜2001年大学入試センター教科専門委員会委員、2006〜2011年大学入試センター教科科目第2委員会委員。化学教育ジャーナル(CEJ)編集委員。著書「理科教育学−教師とこれから教師になる人のために−」(東京教学社)、「解説実験書 新しい北海道の理科」(北海道教育大学)。電気化学・物理化学に関する論文、化学教育に関する論文等多数。
この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」に掲載された内容を一部改変したものです。
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