授業力をみがく
小学校における複合災害の学習につながる授業実践
桃山学院大学人間教育学部 特任教授 川真田 早苗
第4学年「雨水の行方と地面の様子」を活用した土石流の学習
前回は、小・中学校理科における複合災害の授業とその意義について述べました。複合災害を理解するには、小学校段階で自然現象と自然災害の関係を体験や観察を通して学ぶことが重要です。今回は、その基礎となる小学校第4学年の授業実践を紹介します。
令和6年能登半島地震の後、同年9月の豪雨により石川県では多くの土砂災害が発生しました。地震の揺れで崩れた斜面が、その後の降雨によってさらに拡大したことが報告されており(防災科学技術研究所、2024)、この土砂災害は地震と降雨が誘因となった複合災害といえます。2024年6月以降も降雨による土砂災害が続きました。
児童の通学路には土石流危険渓流があります。学習前アンケートで4年生へ「土石流について知っていますか」とたずねたところ、約9割が「知らない」と答えました。
そこで、2024年7月、石川県金沢市の小学校第4学年17名を対象に、「雨水の行方と地面の様子」(全7時間)の第6・7時に土石流の学習を組み込みました。
まず、重ねるハザードマップを活用し、児童の通学路が土石流警戒区域に含まれていることや、地域で実際に発生した斜面の崩落を確認しました。次に、土石流発生前後の写真や国土交通省の動画を見比べ、「土石流はどんなところで起きるのだろうか」という問題を設定しました。児童は「水が高い所から低い所へ流れるように、地面が傾いていると土や岩が流れてくるのかもしれない」と、既習事項を根拠に予想を立てました。
実験では、傾きを0度、15度、30度に変えられる谷川地形を模した土石流実験教材(図1)を使い、上流側に玉砂利を入れてストッパーを外し、玉砂利の転がり方を調べました(図2)。児童は、傾きが大きいほど玉砂利が速く多く流れること、傾きが緩やかになる場所で広がって止まることを発見しました。さらに、実験結果をもとに、家に見立てた積み木を安全な場所に置く活動(図3)を行い、土石流が広がって堆積する場所に家があると甚大な被害になることを実感しました。

図1 傾きを0度,15度,30度に変えられる土石流実験教材
引用:川真田(2024) 小学校第4学年理科における土石流モデル実験教材の開発と実践より

図2 玉砂利を流下させ,結果を記録する様子

図3 家に見立てた積み木を安全な場所に置く活動
学習後、児童は「土石流は傾きが大きいところで起きて、平らになった地面で広がって止まる」「土石流から家や命を守るには、大きな石がある場所よりも遠くに家を建てるとよい」と振り返りました。また、8割を超える児童が学習内容を家族に伝え、家族と一緒にハザードマップで自宅や通学路の周りを調べた児童もいました。この学びが家庭での防災行動にも波及している様子が確認できました。
第4学年でこうした学習をした児童の中には、2023年春に雪解け水がしみ込んで崩れた地域の斜面に施された対策(図4)に気付き、「大きな地震があって雨が降ったのに土を入れた袋を重ねて植物が生えたところは崩れていない。このごろ崖や道が崩れるようになって危ないから、崩れない方法を見つけたい」と発言する姿も見られました。この発言から、地震後の降雨による複合災害を理解するためには、小学校では第4学年「雨水の行方と地面の様子」で基礎を築き、第5学年「天気の変化」、第6学年「土地のつくりと変化」といった各学年の学習内容を関連付けて、地震による土地の変化やその後の降雨がもたらす影響について段階的に学ぶことが重要だと考えます。
小学校での複合災害学習を中学校へとつなげることは、将来、地域社会で主体的に防災に取り組む市民を育成するうえで大きな意義があります。小学校での複合災害学習が中学校でのより発展的な学びへとつながるよう、小中学校が連携し、児童・生徒が地域の防災について主体的に考え、行動できる力を育てていくことを期待します。

図4 児童が気付いた斜面の対策(土を入れた袋)
【引用文献】
国立研究開発法人防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門(2024)「令和6年9月能登半島豪雨による土砂流出推定範囲 −石川県能登半島北部−」
https://mizu.bosai.go.jp/key/2024Noto_2
川真田早苗(2024) 小学校第4学年理科における土石流モデル実験教材の開発と実践,北陸学院大学・北陸学院大学短期大学部研究紀要 第16号,61-67.
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川真田 早苗(かわまた さなえ) 博士(学校教育学)
1964年生まれ
小学校教諭として34年間徳島県の公立中学校に勤務
1986年 徳島学大学教育学部 小学校教員養成課程卒業
2018年 兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科 教科教育実践学専攻(博士後期)課程修了
現 職 桃山学院大学人間教育学部 特任教授
趣 味 砕石ガーデンでも花畑ができるかなと思い立ち庭いじりが趣味となりました。砕石を敷いた庭に,前年度に収穫した数種類の種子を適当に蒔き,砕石の間からどんな種子が発芽するのかをわくわくしながら観察しています。今は,スイートピーが花盛りです。
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