中学生エデュフル

授業力をみがく

食・文化・歴史のヴュルツブルク

その他 全学年 2022/6/28

(前回の内容はコチラ)

岐阜大学教育学部 准教授 河崎 哲嗣


 今回はドイツの南東側バイエルン州の都市ヴュルツブルクについてのお話です。
 フランクフルトとニュルンベルクのどちらからでも、ICE(高速列車)で1時間と少しで到着します。今年2022年9月には、ヴュルツブルク大学において、数学的モデリングの国際会議:The International Community of Teachers of Mathematical Modelling and Applications (ICTMA)が開催されます。2023年9月には初の日本開催として「淡路夢舞台」を会場とする予定です。先生方が「グルグル」とか「思考過程のサイクル」と呼んでいて、課題学習・数学的活動・数学活用・アクティブラーニング・STEAM教育などで取り組ませる活動を中心に研究するICMI(数学教育国際委員会)認定の団体です。授業力を高めるきっかけになると思いますので、ぜひ参加してみてください。

 ヴュルツブルクは、ボトルが「山羊の陰嚢(いんのう)」と表現され目薬の用器のような形をしている「フランケンワイン」の名産地です。一般の人にとっては、お土産として馴染みがあるかもしれませんね。酒屋でリーズナブルな値段で買えますので、ドイツ滞在中には毎晩のように嗜んでいました。ちなみに、滋賀県大津市と姉妹都市提携をしており、琵琶湖畔に都市と同じ名前のドイツ料理店があります。ビールも含めて、フランケン地方の料理はまさに絶品です。
 ヴュルツブルク中央駅前の大通り沿いに数百メートル歩くと、大学施設の実験室があり、一般公開されています。部屋の中の器具や機器を見ても、最初は何の実験をしていたかはわかりにくいでしょうが、この部屋周辺の展示物で気づくことができます。必ず何度かお世話になっているはずですよ。胸像を見てその人物が誰なのかわかる人もいるでしょうか。


 当時の記事や資料が並ぶ中で、指輪を付けた写真を見て気づく方は多いでしょう。特に理科の先生ならばすぐにわかるのではないでしょうか。玄関の文字や、実験室のパネルの文字もしっかりと確認しておけば、誰の実験室であり、何の世紀の大発見を起こした実験室なのかがわかります。

 この施設をあとにして反対方向に、ヴュルツブルクの街を歩いて行きますと、ヨーロッパでも屈指のバロック建築様式を代表する宮殿「レジデンツ」があります。世界最大のフレスコ天井一枚画とホーフ庭園等が世界遺産となっています。吹き抜けの天井一面に描かれた絵は壮大です。庭園の円錐形の樹木がおもしろいですね。


 さらに川に向かって歩を進めてみますと、大学キャンパスの畔に、松や笹の木々を周辺に生やした胸像に出会います。土台部分には「Siebold」と刻印されています。そうです、日本史に出てくる「シーボルト事件」のシーボルトです。事件当時は確か鎖国状態にあった時代の日本でしたから、てっきりオランダ人だと思い込まされていました。彼はこのヴュルツブルク大学に縁のあるドイツ人だったようです。
 彼は、日本で将来を誓い合った女性の名前を、アジサイの学名に付けたと言われています。シーボルト事件の後、彼は国外追放の処分を受けました。アジサイの花開く6月の梅雨の時期、ふと切ない思いが胸を過ぎりますね。


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河崎哲嗣(かわさき てつし)  
1964年生まれ
数学科教諭として、23年間京都府立高等学校・京都教育大学附属高等学校に勤務
2002年 京都教育大学大学院教育学研究科(修士課程)修了
2016年 大阪大学人間科学研究科博士後期課程修了 
2016年 博士(人間科学)大阪大学
現 職 東海国立大学機構 岐阜大学教育学部准教授
専  攻 数学教育学,教育工学,国際遠隔協働学習,STEAM

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