中学生エデュフル

授業力をみがく

先生、理科がわかりません!(2)

理科 全学年 2022/12/20

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明

(前回の内容はコチラ)

 こんにちは。鹿江です。
 今回も前回に続きまして「理科の難しさ」を話題にしようと思います。

 前回は、自分の体験から中学校の理科が苦手になったことを話題にしました。このような体験は私だけではなく、多くの生徒が体験をしていることと思います。学習状況に関する様々な調査結果からも、小学校で理科を「好き」、「よくわかる」と答える児童の割合は、中学校で大きく値を落としています。特に、生徒にとって大変なのは「目に見えない事象」を学習するときでしょう。私が初任の頃、中学校2年の「化学変化」や「オームの法則」の授業を進めると、理科を得意と自認する生徒が次々と理解不能を訴え、やがて「飽和水蒸気量」でとどめを刺してしまった苦い経験があります。自分の力不足を恥じるとともに、目に見えない事象を伝えることの難しさを痛感しました。

 さて、ここまでは中学校の内容を話題にしましたが、小学校の内容でも、理科は一歩踏み込むと容赦なく沼にハマってしまいます。

 先日、小学6年生に光合成の授業をしていたとき、ある児童が「どうして葉は緑色なのですか?」と質問してきました。そこで「葉には葉緑体があってね・・」と説明をしたのですが、その児童はさらに、「なぜ葉緑体は緑に見えるのですか?」とたずねてきました。

 そこで、虹を例に出しながら、太陽光はいろんな色の光が混ざっていること、そして、緑色に見えるのは、緑の光を反射して他の色は吸収していることを説明しました。また、植物は「緑の光」を光合成に使っていないことにもふれながら、「この内容は中学校や高校、大学で学習することだよ」と伝えてこの話題を終了しました。

 でも、説明をしながら、私自身は冷や汗(@@;)です。この児童への回答からは、さらなる疑問がわき出る余地が数多くあります。例えば、なぜ植物は緑の光を使わないのか、なぜ物によって反射・吸収する光が違うのか、さらには、そもそも光って何なのか・・小学生の内容も、ちょっと踏み込むだけで大変高度な内容へと簡単に入ってしまいます。

 私自身、これまで理科の授業で児童・生徒に「疑問をもつこと」の大切さを伝えてきました。でも、気をつけないと、児童・生徒を科学の大海原に、地図も持たせず放り出すことになりそうです。理科の授業には、教師の「ナビゲート」がとても重要だと考えています。

研究室で水耕栽培中のレタスやサラダ菜。
光の強さや種類を変えて実験しています。


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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