中学生エデュフル

授業力をみがく

先生、理科がわかりません!(1)

理科 全学年 2022/10/25

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明


 こんにちは。鹿江(かのえ)と申します。これまで広島県の中学校で理科教員を23年間勤めたあと、13年前に転職し、現在は大学で教員養成を担当しています。

 さて、今回は自己紹介をかねて、理科の得意な先生方に「理科の難しさ」を訴えてみたいと思います。
 私が小学校の頃(昭和40年代)、理科は好きな教科の一つでした。昆虫や植物など、身の回りの自然は、私にとって楽しい遊び道具でしたが、教科としての「理科」も大好きでした。これまで見たことがない宇宙や顕微鏡の世界には、小学生なりにワクワクしていました。また、授業で実験が始まると、様々な道具を使って「疑問」を確かめていく過程がまるで推理小説の犯人さがし、あるいは、手品のトリックさがしのようで、楽しくて仕方がありませんでした。

 ただ、ふり返ってみると、子どもの頃から、私は素直に知識を学ぶことが苦手だったように思います。磁石の実験で「鉄だけ磁石につく」と結論が出ると、「なぜ鉄だけ磁石につくのですか?」と質問する子供でした。電気を通すものと通さないものを分ける実験では、「金属が電気を通す」と結論が出たのに「鉛筆の芯はなぜ電気を通すのですか?」とたずねました。光の実験では、「なぜ、レンズや鏡で光が曲がったり反射したりするのですか?」と疑問をぶつけ、挙げ句の果てには「昆虫はなぜ頭・胸・はらに分かれているのですか?」などなど・・理科が得意ではない先生にとっては、大変面倒な児童だったことと思います。

 中学校に進学すると、少しずつ理科が苦手になっていきました。1年の「溶解度」の学習では「なぜ物質で溶解度が違うのか?」と疑問に思い、学校の図書室で調べようとしましたが、解決できる本に出会うことができませんでした。(今ならネット検索で、瞬時に必要な情報にたどりつけるのですが・・・便利な時代になりました)
 次に困ったのが、2年で学ぶ「化学変化」です。化学反応式が登場すると、徐々に自分の理解が進まなくなりました。特に、左辺と右辺の数字あわせは実験結果と結びつかず、「そんな都合のよいことをしてよいのか?」と、自分の脳内で抵抗勢力が大きくなっていることを自覚しました。そして極めつけは「オームの法則」! 突然、電流の流れる向きが+→−から−→+になり、次に「電圧」「抵抗」といった理解できない概念が登場し、もう「ここからは数学!」と割り切るよりほかなく、私の中では、理科が徐々に嫌いな科目になっていきました。(つづく)


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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