中学生エデュフル

授業力をみがく

授業をデザインする(9)なぜICTを使う必要があるのか

理科 全学年 2024/7/16

(前回の内容はコチラ)

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明


 今回からは,3回にわたって授業でのICTの活用について考えてみましょう。

 GIGAスクール以降,生徒1人1人に端末が使える時代になりました。一方で,「ICTを使わなくても授業ができる」「生徒がすぐネットで調べるので思考力が育たない」などと,授業での活用に否定的な意見も聞こえてきます。

 では,そもそも私たちは,なぜ授業でICTを使う必要があるのでしょうか? その大きな理由は,「社会の変化」にあると考えます。

 私たちは既に,情報機器を利用してビッグデータやAIを活用する生活を始めています。日常生活に目を向けると,買物でスマートフォンのアプリで決済し,端末で天気予報を確認しながら,ニュースサイトやSNSで毎日情報を得る生活が普通になってきました。ほとんどの自動車にはカーナビが備え付けられ,最近では自動運転バスの取り組みも進められています。その変化の是非はともかく,私たちの社会は間違いなく「超スマート社会」への移行が進められています。

出典:内閣府ホームページ( https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/ )


 それに伴い,学習方法も変化しつつあります。近年のオンラインコンテンツには,良質な学習材が増えてきました。誰でも必要な情報にアクセスすることができるようになり,デジタル教科書も普及しつつあります。さらには,気軽にAIを活用しながら学習を進めることもできるようになりました。

 生徒たちは,このように変化する社会の中を,これから何十年も生きていきます。私たち教師は,生徒たちが10年後,20年後に社会の中でwell-beingを求め,よりよく生きていくために必要な力を,いま,育む必要があります。

 情報端末機器が活用できる・できないは,これからの社会では「格差」にも直結するでしょう。私の母は今年88歳になりますが,毎日新聞を読み,ニュースを欠かさず見ながら元気に生活しています。しかし,残念なことにインターネットを利用するスキルがありません。

 ネットが使えない・ということは,必要な情報を「自分から」取りにいくことができないことを意味します。例えば,数年前の新型コロナウイルスのワクチン接種予約では,電話や窓口で手続きするしか方法がなく長い時間と手間を要していました。最近では,タクシー予約もアプリが優先されるようになりましたので,電話でタクシーの予約が難しくなった・と言っています。

 変化が加速するこれからの社会の中で,よりよく生きるためには,情報端末機器を活用した学び方を習得する必要があります。次回は,どのような使い方が求められているかを話題にしたいと思います。


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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