授業力をみがく
授業をデザインする(8)ワークシートの効果と留意点
比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明
今回は授業で使用頻度の高いツールの一つ,ワークシートに注目してみましょう。
授業中にワークシートを活用される先生は多いことと思います。私自身,中学校の理科授業ではワークシートをよく利用していました。このワークシートですが,どのような効果や留意点があるのでしょうか? 考えてみましょう。
1 授業展開にそった情報提供
授業に必要な情報を生徒に渡すときにはタイミングがあります。教科書以外の図や表,グラフ,写真等の資料などは,ワークシートを活用することにより,必要な時に必要な情報を渡して生徒の思考の流れを導くことが可能になります。
2 授業のポイント把握
毎時間の授業は,生徒にとって初めての内容であり,重要な部分やポイントが把握しにくいこともあります。ワークシートに書き込み欄や穴埋め欄を設定することで,キーワードを確認させたり,授業のポイントを把握させたりすることができます。
3 主体的な学びを支援・促進
課題設定から課題解決までの一連の過程を,1人1人に配付されたワークシート内に書き込ませることにより,生徒の思考や学習過程を可視化させるとともに,振り返りの資料としても活用できます。また,表枠やグラフ枠をワークシート内に用意することで,時間短縮と集中力の持続の効果もねらえます。
4 個々の生徒への指導と評価
授業後にワークシートを回収することで,生徒1人1人の学習状況を把握し評価できます。また,返却を通して先生からのフィードバックも可能になります。ワークシート内にまとめの問いや発展的な問題を加えておくと,学習内容の定着を図る上でも効果的です。
一方で,次のような課題もあります。
1 学習記録の消失
せっかくのワークシートも,学習後にワークシートを整理する方法を決めておかないと,散逸したり紛失したりしてしまい,学習の記録がなくなる可能性があります。
2 思考する機会の減少
単純な穴埋めは,生徒の思考を停止させる可能性があります。ワークシートに記入させる場合には,事前に生徒が思考する問いを用意する必要があります。
3 板書,ノート,情報端末機器との役割分担
全生徒がGIGA端末を所持している今の時代は,ワークシートを配付しなくてもICT機器を活用すれば簡単に情報共有ができます。どのツールを用いるか…授業全体で,それぞれの特性をもとに事前に役割を決め,生徒と共通理解を図っておかないと,情報の整理が複雑になります。
このように,ワークシートは授業者にとって便利なツールですが,時には学習する側に立ち,学習効果が得られているか点検することも大切ですね。
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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。
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