中学生エデュフル

授業力をみがく

授業をデザインする(5)机間指導から授業を組み立てる

理科 全学年 2024/2/27

(前回の内容はコチラ)

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明


 私たち教師は,50分間のうち多くの時間を使って,生徒の前で授業をしています。一方で,生徒に時間を渡し,生徒の主体的な活動時間を保障することも大切です。このとき,教師は机間指導を積極的に行い,個々の生徒の指導や支援に取り組みますが,特に理科では観察や実験を伴いますので,机間指導の時間も他教科より多くなります。

 では,観察・実験中の机間指導では,どのような取り組みが考えられるでしょうか? この時間で取り組んでいることを書き出してみると,多岐にわたることがわかります。
・教師の指導の意図が適切に伝わっているかを確認する
・発言していない生徒の予想や,それを支える考えを把握する
・生徒にとってわかりにくい内容やつまずきを把握する
・生徒の活動の進度にどの程度差が生じているか情報収集する
・進んでいる班に対して,学習を深める別課題を提示する
・各班に,安全上の問題が生じていないか確認する
・課題がある生徒に個別指導・支援をする
・声をかけていない生徒へ評価をする
・学習が進んでいる生徒には,発展的な課題を示す
・授業計画に沿って,観察・実験後の指名者・発表者を決める
など・・・

 これらの取り組みをざっくりと分類すると,@実態把握,A活動の進度調整,B安全への配慮,C個別指導と評価,D授業計画の推進などがあげられます。

 特に,理科における観察・実験は班で時間差を生じることが多く,教師にとっては残りの授業時間が気になります。そのため,遅れている班には必要に応じて積極的に支援したり,先に進んだ班には新たな課題や観察・実験のポイントを確認させたりするなど,時間を有効活用できるよう事前準備をしておきたいところです。また,教育実習の場面でよく見かけるのですが,多くの実習生が「教室の前」の班から机間指導を始めます。でも,教室内で机間指導が必要な班は「教室の後」の班であったり,「課題がある班」ではないかと思います。机間指導の順を工夫しながら,活動の時間差を縮めてみてはいかがでしょう。

 実験中には,教室全体の安全確認も大切です。特に火気を扱う実験では,教師はなるべく視野を広く確保しておきたいところです。机間指導も,できれば壁を背中にしながら指導をするなど,立ち位置を気にかけてはいかがでしょう。

 これらの机間指導をもとに,観察・実験後の授業の組み立てを再構成することができます。活動中の各班の状況や個のつぶやき,疑問点をもとに,結果の整理からまとめを円滑に進められるよう,どの生徒に,どの順で発言を求めるか(意図的指名)まで,作戦を立てみてはいかがでしょうか。


----------------------------------------

鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

アンケート

よろしければ記事についてのご意見をお聞かせください。
Q1またはQ3のいずれか一方はご入力ください。

Q1:この記事は授業準備のお役に立ちましたか。
Q2:この記事の詳しさは適切でしたか。
Q3:その他、ご意見・ご感想をお聞かせください。

全角で512字まで入力できます。