中学生エデュフル

授業力をみがく

授業をデザインするCオープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

理科 全学年 2024/1/30

(前回の内容はコチラ)

比治山大学現代文化学部 教授 鹿江 宏明


 今回の話題は学習課題です。この学習課題を設定するときに,どのような疑問文を設定すれば,生徒の思考を深めることができるでしょう?

 教科書に記載されている学習課題は,章や節など一連の学習が始まる位置に「?」マークで示されています。この学習課題の文に注目すると「なぜ」「どのように」などの表現が多く使われています。これらは「オープンクエスチョン」とよばれ,生徒から多様な考え方や仮説を引き出すことができる問いかけ方です。一方で,生徒の実態によっては「何を答えたらよいか思いつかない」「どのように考えたらよいかわからない」などのように取り組みにくい問い方になってしまい,授業のリズムが滞ることもあります。

 オープンクエスチョンに対しては,「クローズドクエスチョン」とよばれる問いかけ方もあります。こちらは学習課題をYes/Noの2択にしたり,生徒が迷いながら思考できる選択肢をいくつか提示したりする方法です。このような課題設定は,生徒にとっても考える方向が限定されるので取り組みやすくなります。一方で,生徒の思考を限定しますので,理科の中で重視したい「課題を設定する力」や「仮説を立てる力」を伸張させる授業展開にはなりにくくなります。


 ここで,生態系における物質循環の授業について考えてみましょう。生徒から多様な考えを引き出せるオープンクエスチョンの学習課題の例としては,つぎのような文が考えられます。


 この学習課題に対し,生徒にとって思考する範囲が広いな・・という場合には,「物質」を「炭素」に変えることで,思考の範囲を限定させることもできます。


 さらに限定をかけて,注目させたい内容を明示したり選択肢を提示したりするならば,次のような学習課題も考えられます。


 生徒の状況に応じ,学習課題をオープンクエスチョンからクローズドクエスチョンまで自在に設定することで,生徒の状況にあった思考を深める授業をデザインしてはいかがでしょう。


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鹿江 宏明(かのえ ひろあき) 博士(教育学)
1963年生まれ
中学校理科教諭として23年間広島県・市の公立中学校、広島大学附属東雲中学校に勤務
1989年 広島大学大学院学校教育研究科(修士課程)修了
2009年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了
現 職 比治山大学現代文化学部 教授
活 動 教員養成のほか、科学館のサイエンスショーや科学講座、NPO法人学修デザイナー協会理事長、一般社団法人日本アマチュアオーケストラ連盟理事など、幅広く活動している。

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