中学生エデュフル

授業力をみがく

ドイツでの進路指導は小学校から!

その他 全学年 2024/8/27

(前回の内容はコチラ)

大垣女子短期大学 幼児教育学科 講師 岡本 英通


 先日、研究仲間のドイツの方と教育システムについて話をしました。そのときに聞いたドイツの教育システムの現状について紹介しようと思います。
 ドイツでは、多くの州が10歳で1回目の進路選択を行います。州ごとに小学校の長さが違い、多くは10歳までが小学生とされ、その後は将来の進路を考えて、様々な種類の学校から1つを選択します。
 選択する学校には、それぞれ特徴があります。例えば、「ギムナジウム」という学校はいわゆる進学校です。この学校を選ぶと、大学受験を見据えた高度な教育を受けることができます。他に「レアルシューレ」という、卒業後に専門技術者などを目指す学校があり、これは日本だと専門学校や工業・農業高等学校などにあたります。この2つ以外にもいくつか学校の種類があり、選んだ学校によって、卒業後の進路がおおよそ決まっていくのです。

図1 ドイツの教育システムの概観

 つまり、日本でいえば高等学校の選択をするくらい重要な選択を、早ければ10歳でするということです。進路に関しては、子どもの成績をもとに担任教師と親と子どもで面談し、最終的には子どもと親で決めます。しかし、10歳の子どもに進路の判断ができるのでしょうか? 多くの親は、ギムナジウムに入れたいと願います。ギムナジウムに入学し、大学に行けた方が、将来の職業選択の幅も増えるからです。そのため、成績が悪くても、無理を通してギムナジウムに入学させます。その結果、子どもの成績が悪くなり留年をしてしまうことがあります。ドイツでは小学校でも留年があります。私が聞いた話では、ギムナジウムで通算2回の留年をした場合、ギムナジウム以外の学校に転校しなくてはいけないそうです。

 学力が十分身に付いていなくても進級する日本と、早く進路選択をして学力がなければ留年や転校があるドイツ。どちらのシステムがいいのでしょうか? 難しい選択ですね。


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岡本 英通(おかもと ひでみち)
1993年生まれ
岐阜県内の公立小・中学校(数学科)を通算で4年間、教諭として勤務
2018年 岐阜大学大学院 教育学研究科総合教科教育専攻 サイエンスコース 数学(修士課程)修了
2023年 カールスルーエ教育大学(原文: Padagogische Hochschule Karlsruhe, ドイツ) 自然社会科学数学科後期課程修了
2023年 博士(哲学)カールスルーエ教育大学
現 職 学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学幼児教育学科 講師
専 攻 数学教育学,創造性・創造的思考,遠隔協働学習


※Padagogische Hochschule Karlsruheの“Padagogische”のはじめのaは上部に‥がついたもの。文字化けを避けるためこの表記にしております。

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