中学生エデュフル

授業力をみがく

数学的に考えることができる授業の実現に向けて(4)

数学 全学年 2020/9/15

宇都宮大学准教授
牧野 智彦

(前回の内容はコチラ)

 「記録」には,数学的活動における生徒の思考や行為とその意味だけでなく,教師の思考や行為も含めたいものです。例えば,授業の中では,教師によって,数学的な思考を促す問いかけがなされています。その問いかけを契機として,生徒は数学的活動に取り組み始めます。こうした数学的活動の契機となる問いを,生徒が自らに問えるようになるようにしていくことが大切です。さらに,数学的活動を進めていく中で,生徒が疑問に思うこと,困っていること,悩んでいることも,発言させるだけでなく,「板書」しておくとよいと思います。
 生徒の思考を「記録」するために,「生徒の考え,生徒がどのように考えたのかを知りたい」というスタンスが大切だと思います。この種のことに関心がないと,生徒の思考や行為の意味に注意を向けることができません。また,思考の特性についても理解しておく必要があります。例えば,生徒は一度に自分の考えをすべて表現できるわけではありません。だから,生徒の発言に対して「何を言っているかわからない」と諦めたり,「わかってないな」と切り捨てたりしないように留意したいです。生徒は自分の考えをどう表現したらよいかがわからないのかもしれません。大切なことは,答えが合っているか間違っているかではなく,生徒が構成している「意味」です。それを見いだすためには,教師は粘り強く,生徒に問いかけていくことが求められます。


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牧野 智彦 先生
1973年群馬県みなかみ町出身。群馬大学教育学部数学科,筑波大学大学院修士課程教育研究科,筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。国立教育政策研究所教育課程研究センター,上武大学を経て,2010年より現職。主な出版物は,『教科教育の理論と授業U:理数編』(大熕・清水美憲編著,分担執筆,協同出版,2012年),『教科教育学シリーズB算数・数学科教育』(藤井斉亮編著,分担執筆,一藝社,2015年)。

この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」に掲載された内容を一部改変したものです。

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