中学生エデュフル

授業力をみがく

もしも異世界に転生したら

その他 全学年 2025/2/25

(前回の内容はコチラ)

大垣女子短期大学 幼児教育学科 講師 岡本 英通


 まず、このタイトルを見た際、急に教育と関係のないもので、驚かれたかもしれません。最近、この「異世界」というキーワードが入った作品が、アニメや小説で広まっていて、書店に行けば必ず、この単語の入った書籍が目に入ってきます 。そうした作品たちは、私たちの「辛い現実から逃げて、異世界へ行ってしまいたい」という願望の表れなのかもしれません。
 ところで、私たちは既に「異世界へ行く」という点において、この願望を叶えていると言えます。「何を言っているんだ!」と思われるかもしれませんが、考え方を変えてみましょう。「赤ちゃん」にとっては、この地球が「異世界」とも言えるのではないでしょうか。つまり、私たちは生まれてきたばかりの頃、この世界はまさに「異世界」であったはずです。その意味では、既に私たちは「異世界」に来ているのです。

 さて、「異世界」に来たばかりでは、知らないものだらけです。特に困ることのひとつに「コミュニケーションがとれない」があるでしょう。よくある異世界転生の作品では、主人公はすぐに会話ができます。しかし、赤ちゃんは違います。0からのスタートです。それだけでなく、生まれて数ヶ月は、自分で体を動かして食事をとることもできません。そんな赤ちゃんは、生後1年で簡単な単語を話し始めます。もちろん個人差がありますが、2〜3歳で「語彙爆発」という急激な言葉の成長を見せます。
 赤ちゃんは、超ハードモードの異世界転生であると言えますね。そうした目線で「赤ちゃん」を見ると、その 驚異的な学習能力には脱帽です。

 そうした赤ちゃんの経験をもう一度できるようなゲームもあります。Steamという世界最大級 のPCゲームプラットフォームには「7 Days to End with You」という、記憶喪失になった主人公が、全く分からない言語を話す女性と交流し、何を話しているのか予想しながらストーリーを進めるゲームがあります。まさに、未知の言語を推測して理解しようとする赤ちゃんの学びを追体験できます。他にも、「ヘテロゲニア リンギスティコ 〜異種族言語学入門〜」という漫画も、おすすめです。主人公が、全く別の言語を話すモンスターたちと交流しながら、種族間の価値観や認識の違いを学んでいく物語です。
 上記に紹介した作品は、私たち人間の言語習得や概念理解の難しさ、赤ちゃんのすごさなどを改めて気づかせてくれるものです。次回はそうした言語習得や概念理解の困難さが教育に与える影響について書いていきたいと思います。

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岡本 英通(おかもと ひでみち)
1993年生まれ
岐阜県内の公立小・中学校(数学科)を通算で4年間、教諭として勤務
2018年 岐阜大学大学院 教育学研究科総合教科教育専攻 サイエンスコース 数学(修士課程)修了
2023年 カールスルーエ教育大学(原文: Padagogische Hochschule Karlsruhe, ドイツ) 自然社会科学数学科後期課程修了
2023年 博士(哲学)カールスルーエ教育大学
現 職 学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学幼児教育学科 講師
専 攻 数学教育学,創造性・創造的思考,遠隔協働学習


※Padagogische Hochschule Karlsruheの“Padagogische”のはじめのaは上部に‥がついたもの。文字化けを避けるためこの表記にしております。

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