授業力をみがく
ドイツの不登校事情
大垣女子短期大学 幼児教育学科 講師 岡本 英通
ある日、ドイツの不登校に関するYouTube動画がおすすめに上がってきたので、どんなものかと視聴してみました。まず目を引いたのが、再生して数秒後に警察が出てきたことです。「もしかすると、不登校の子が犯罪に巻き込まれた話をしているのか?」と思いました。しかし、よくよく話を聞いていると、その予想が違ったことが判明します。
ドイツでは、不登校は「義務教育を放棄しており、法律を犯している」という認識になっています。冒頭でお話したYouTube動画では、警察が不登校の子の家庭に訪問をしていた様子が流れていたのです。しかも、他の犯罪と同様に、不登校の家庭には、罰金が課されるようになっています。次の表は、ドイツの州における罰金の一覧です。

ドイツの州における罰金の一覧(参照リンク https://www.bussgeldkatalog.org/schule-schwaenzen/ 2024年4月20日 アクセス)
この一覧をみると、低くても日本円で約16万円の罰金を課されています。さらに、この義務違反を繰り返した場合、最大6ヶ月以下の懲役を課される州もあります。
これだけ聞くと、「えっ、いじめや心の問題が原因で不登校になっている子や親に、罰金を課すの?!」と驚くかと思います。もう少し調べていくと、そんなことはないと分かり、私も安心しました。罰金が課されるのは、そうした心身の影響がなく、具体的な理由もないのにさぼってしまう子の家庭に対してとなります。
そうは言っても、判断が難しいと思いませんか? 特に理由は言わないけれど、学校に行けないという子は、「さぼっている」のでしょうか? 本当はいじめを受けているけど言えないだけでは……。そうした子のために、多様な福祉サービスやカウンセリング施設や学校、警察が連携して対応しているようです。
不登校の子に対してチームで対応し真摯に向き合う態度は、どの国も変わらないということですね。
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岡本 英通(おかもと ひでみち)
1993年生まれ
岐阜県内の公立小・中学校(数学科)を通算で4年間、教諭として勤務
2018年 岐阜大学大学院 教育学研究科総合教科教育専攻 サイエンスコース 数学(修士課程)修了
2023年 カールスルーエ教育大学(原文: Padagogische Hochschule Karlsruhe, ドイツ) 自然社会科学数学科後期課程修了
2023年 博士(哲学)カールスルーエ教育大学
現 職 学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学幼児教育学科 講師
専 攻 数学教育学,創造性・創造的思考,遠隔協働学習
※Padagogische Hochschule Karlsruheの“Padagogische”のはじめのaは上部に‥がついたもの。文字化けを避けるためこの表記にしております。
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