中学生エデュフル

授業力をみがく

先進校授業参観

その他 全学年 2022/4/26

(前回の内容はコチラ)

岐阜大学教育学部 准教授 河崎 哲嗣


 皆さん、こんにちは、河崎です。前回に引き続き、訪問校でのお話です。
 実際の授業の風景を見てみないとイメージが湧きません。そこで、グローカル教育として、他国にどのような内容や方法を用いて教育活動を行い、情報発信をしているのかを授業参観させてもらうことにしました。
 時間の都合上、参観は午前中の授業となりました。1つ目は、社会(政治・経済・地理)と食生活を融合した教育内容を作り、地域社会システムの今後をどのように改善していくかについて、協働で考える授業でした。地理(社会科)と英語科と保健体育科の3つの教員免許を持つ先生が担当です。先生が地域の特産物や企業に関する実態調査資料(写真参照)を渡し、現実に直面している課題を見つけ、さらにそれらを開発・起業した地域での著名な人物についても調べ、モノローグ形式で発表する方法でした。


 先生が準備したたくさんのキーワード用紙をカードになるように切り分け(写真左端)、資料をよく読み、まず生徒自身の意見・考えをまとめていきます。その際に、タブレットを使って調べている様子も見られました。その後、各自の意見をまとめるために、グループに分かれての協議です。先生はときどきグループの中に伴走するように入り、方向性を調整していました(写真中央)。最後に、グループで作ったポスターを発表し、全体の協議に発展させ、クラス全体の意見を共有するような(写真右端)、最近の日本でもよく見かける仕組みです。


 この次は英語の授業でした。担当は、英語と情報の2つの免許を持つ先生です。先生の指示のもと、生徒達がたちまち教室から居なくなったため、校内で生徒達が何をしているのかを探しにまわることになってしまいました。どうやら現在起こっている自国や地域の時事課題や校内ニュースを動画にしてとりまとめる授業であったようです。
 ディレクター、カメラマン、アナウンサーなどの役割を決め、テレビ局のようなセッティングで報道番組を作っている生徒達がいました(写真左)。日本人の学校訪問がニュースとして珍しかったのか、同行していた学生の一人にバナナをマイク代わりに渡して、インタビューを英語で行う生徒も(写真右)。その様子をiPadで撮影して、次の授業時間での発表に繋げようとしていたわけです。iPadを使いこなす生徒達の自在な発想・想像力が、当時面白かったのを憶えています。早速次の日には「HPにその様子がアップロードされていた」と学生から聞きました。


 3つ目の授業は国語でした。担当の先生は、なんと校長先生。彼は国語科と情報科の免許を持っていました(写真左端)。タブレットで閲覧できる文学作品や現代小説のebookの中から、先生が20程のキーフレーズを抽出し(写真中央)、生徒達はその中から3つを選んで、1つの作品ストーリーを紹介しコマーシャル映像で表現する活動をしていました(写真右端)。



 映像に登場する人物は、全て発表するグループの生徒達です。それぞれの映像発表に対して、限られた授業時間内での意見や質問を通して考えを深め合う、とても創意あふれる取り組みでした。最後には校長先生が「どういう結末になったかこの本を読めば判明するよ」となかなかユニークな切り口を盛り込んでいました。
 授業後、校長先生にこの授業の目的について確認してみました。表現力の育成ということもあるけれども、「読書をしなさい」と指示しただけでは本を読まない。薦めたい本についてキーフレーズを生徒達に提示し、生徒達自らストーリーを組み立て、実際の本の内容はどうなのかについて興味関心を持たせたい意図があったようです。

 どの授業でも、必要な知識や情報を手元にあるタブレットを活用して入手しており、未来の授業スタイルが見え隠れしていました。正しく活用する情報リテラシー教育と環境が整えば、各教科における大切な基礎学力を獲得させていく方法もやがて変わっていくような気がしますね。


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河崎哲嗣(かわさき てつし)  
1964年生まれ
数学科教諭として、23年間京都府立高等学校・京都教育大学附属高等学校に勤務
2002年 京都教育大学大学院教育学研究科(修士課程)修了
2016年 大阪大学人間科学研究科博士後期課程修了 
2016年 博士(人間科学)大阪大学
現 職 東海国立大学機構 岐阜大学教育学部准教授
専  攻 数学教育学,教育工学,国際遠隔協働学習,STEAM

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