中学生エデュフル

授業力をみがく

数学で使える「便利すぎて大丈夫?」なアプリとの付き合い方

その他 全学年 2026/1/27

(前回の内容はコチラ)

大垣女子短期大学 幼児教育学科 講師 岡本 英通


 技術の進歩は目覚ましく、驚くほど精度の高いアプリが日々開発されています。そんな中で、数学の問題を解くときに使えるアプリが様々な会社から出てきています。今回は、いくつかのアプリの特徴やそれらを数学教育で使うのであれば、どうしていくといいのか考察していこうと思います。
 まず、大手のGoogle社が提供する「Google レンズ」。紙面や画面の数式・図形をカメラで読み取ると、以下の写真のように解答だけでなく手順の解説まで表示できます。

 現在“Math solver”機能が統合され、図形問題にも対応が進んでいます。


 似たアプリで「PhotoMath」というアプリがあります。印刷物や手書きの数式をスキャンし、ステップごとの解説や複数の解法、グラフ表示までサポートするのが強みです。難所で途中式が省略されがちな学習者ほど、過程が見えることは理解の助けになります。
 これらは、AIが学習を積み重ねており、日々精度も高くなっているようです。また、2つに共通しているのは、計算の過程を段階的に示してくれる点にあります。数学が苦手な子は、特にこの答えまでの過程で省略されてしまうと何をしているのか答えを見ても結局わからないという状況であることが多いはずです。市販の問題集や教科書の巻末にある解答などは答えのみが示されている場合が多いところに、こうしたステップバイステップで解答を解説してくれるアプリは、理解を助けてくれることでしょう。
 他にも、大学レベルの数学まで対応している「Mathpix」というソフトもあるようです。以前、この授業力をみがくの記事で、AI活用について書かせていただきました。あれから一年以上が経ちました。そのときにも、AIではまだ作問することが難しいというお話をしました。しかし、問題を解答するだけであれば、かなり高いレベルでAIを活用したソフトが可能にしてしまっているのが現状です。

 こうしたソフトがあることは、子どもでも少し調べればわかります。そして、それを知った子どもが「数学なんて必要ないじゃん。AIが解いてくれるから」と言ってくることもあるはずです。そうしたときに、私たち教師が何と返事をするのかは考えなくてはいけないことでしょう。あなたなら、どのように子どもへ話をしますか?
 私なら「数学で大事なのは“答えが出た”ことではなく、“なぜそうなるかを説明できること”です。その答えまでの過程を論理的に説明する力は、数学で大切なことの1つです。その力は、数学だけでなく別の場面でも活かされてきますよ」と応じます。また、「AIの提示した手順は候補にすぎず、条件の妥当性(単位・範囲・近似の良さ)や反例の有無を自分で検証する力が求められます。AIの解法と自分の解法を比較・批判し、より筋の通った説明に仕上げたら、AIはあなたの考えをより高めてくれる素晴らしいツールになるね。」と付け加え、AIはあくまで道具であり、頼りすぎないことを暗に示していきます。
 実際に数学教育でうまくAIを活用して効率的に学べるようにすることは、意味のあることではないでしょうか? その際には、解答だけでなく思考の過程も提出させ、AI使用時はどこで使い、何を確かめたかを明記することが必要でしょう。そして、AIのサポートによって、自分は何がわからなかったのが解決したのかも説明させる活動があると、より効果があると考えられます。また、授業の中で「自分の解法/AI解法/友だちの解法」を並べ、比較しながら、長所短所を言語化し最適解法の選択理由を書くような方法もあるかもしれません。すでに、試験的にAI活用した数学の授業を実践している中学校があります。例えば、岐阜のある中学校では、数学と英語の授業にAI活用を組み込んでいるようです。

参考動画:岐阜市公式チャンネル(YouTube)

 一方で、留意点も欠かせません。文部科学省のガイドライン(初等中等教育段階における生成AIの利活用 Ver.2.0)では、個人情報の適切な取扱い、著作権配慮、バイアス等のリスク理解、教委によるセキュリティポリシー整備、保護者負担への配慮、最終判断は教職員といったポイントが具体例とともに示されています。校内ルールや授業設計に落とし込む際の土台になります。また、AIの解答が完璧ではないことも必ず押さえるポイントです。
 技術の発展を止めることはできません。そして、そうした技術が当たり前となる社会で今後生きていく子どもたちが目の前にいます。だからこそ、AIや情報技術を“禁じ手”にするか“丸投げ”するかの二択ではなく、学びを深くする補助輪として設計する視点が重要です。教師は「問いの設計者/比較と説明のファシリテータ」へ、生徒はAIなどの技術が言った内容を鵜呑みにせず「吟味する批判的思考者」に。そんな役割転換こそ、これからの数学授業を豊かにしてくれるはずです。


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岡本 英通(おかもと ひでみち)
1993年生まれ
岐阜県内の公立小・中学校(数学科)を通算で4年間、教諭として勤務
2018年 岐阜大学大学院 教育学研究科総合教科教育専攻 サイエンスコース 数学(修士課程)修了
2023年 カールスルーエ教育大学(原文: Padagogische Hochschule Karlsruhe, ドイツ) 自然社会科学数学科後期課程修了
2023年 博士(哲学)カールスルーエ教育大学
現 職 学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学幼児教育学科 講師
専 攻 数学教育学,創造性・創造的思考,遠隔協働学習


※Padagogische Hochschule Karlsruheの“Padagogische”のはじめのaは上部に‥がついたもの。文字化けを避けるためこの表記にしております。

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