授業力をみがく
ドイツのICT教育
岐阜大学教育学部 准教授 河崎 哲嗣
さて、今回も、現在ドイツで研修中である現職の先生に提供をお願いした最新情報をお届けします。(私の教え子になりますが、お名前は控えさせてください)
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今回は、ドイツのICT教育について書かせていただきます。ドイツ国内でもICTを活用した授業の推進がなされており、コロナの影響でその普及が加速したと言われています。ドイツではロックダウンが行われていた時期もあり、日本と同様、生徒が学校に通えなくなっていた期間があります。そんな中で、様々なICTを使った取り組みがなされたようです。
それでは、学習支援で扱われているアプリケーションについてご紹介していきます。私がドイツの教員の方々にインタビューをした際、よく挙げられたのが、「ANTON」というアプリケーションです。
この「ANTON」は、基本的に無料で使用ができます。また、コンテンツの量も豊富です。学校で学習する教科全てを網羅しています。さらに、幼稚園レベルから高校3年生レベルまでの内容があります。そして、自分の学習した記録も残り、確認テストも行えます。また、教師が、グループを作り、生徒の進捗状況を管理しながら、一緒に学んでいくことも可能です。そのため、コロナ禍でロックダウンになった際、このアプリを活用して学習を促していた学校もあるそうです。下の左側の画像で、学習できる教科の項目がたくさんあることが分かります。最近、ウクライナ語とロシア語が追加されたようです。右側の画像は、正負の数の計算の小テストになります。ヒント(Tipp)機能も搭載されています。

この「ANTON」は、EUの支援を受けて作成されています。財源がしっかりしたところで、良いものをつくり、無料で使用できるようにするあり方は、まさに「教育への投資」であると感じます。
もちろん、「ANTON」以外にも、多様なアプリケーションが活用されているそうです。例えば、ゲーミフィケーションを可能にする「Classcraft」というアプリケーションを実践している学校があります。ゲーミフィケーションとは、ゲーム要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用することです。「Classcraft」では、宿題を提出できたらポイントがもらえ、自分のアバターのコスチュームを変えたり、レベルアップをさせたりすることができます。また、グループを作り、協力しなければクリアできない課題を出題し、チームワークを学ばせることもできるようです。このように、学校の中での活動をゲーム化するためのアプリがあります。このようなアプリを導入することで、生徒のモチベーションに良い影響を与えることが報告されています。

日本にも、そうしたアプリケーションは存在し、学校での実践もあるようですね。
そうしたアプリケーションを使用するには、デバイスが必要となります。日本では、政策としてタブレット端末の配布が行われたため、生徒はデバイスを持っています。一方、ドイツでは日本のような政策は行われていません。そうなると、「ICT機器を生徒全員が使えない」と思われるのではありませんか? ところが、問題ないのです。ドイツでは、ほとんどの小・中学校でスマホの持ち込みが許されています。そのため、授業中に教師が許可を出せば、上記で挙げたようなアプリケーションを自分のスマホで使用することができます。
日本では、「ブラック校則」なるものが、一時期、話題を呼んでいましたね。ドイツでは、校則がかなり緩く、スマホの持ち込みだけでなく、ピアスをしている小学生もいるくらいです。多くのことを、本人や家族に判断をゆだねているところが、ドイツらしいと感じます。
例で挙げたスマホや服装に関してだけでなく、ドイツの学校生活は、日本と違う点が多くあります。次回は、そんなドイツの学校生活について書いてみようと思います。
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