授業力をみがく
光の色 〜自作したDVD分光器で光源の光を分光する〜(3)
北海道教育大学教授
田口 哲
光のスペクトルを観察するときは,スリットを光源に向けて観察窓に眼を近づけて観察します。光源としては,白熱灯やLEDランプなどがよいでしょう(前者は熱くなるので触れないよう注意)。これらのスペクトルを観察することで,白色光がいろいろな色の光に分けられる(帯スペクトルが観察される)ことを生徒一人ひとりが体験できます。
さらに発展的にはなりますが,蛍光灯の光のスペクトルを観察するのもおもしろいです。白熱灯やLEDで観察されたようないろいろな色からなる光の帯に何本かの“輝線”が重なって見えます。この輝線(決まった波長の光)は,蛍光灯のフィラメントから出た電子(熱電子)が蛍光管内の水銀原子に衝突することで励起状態になった水銀から放射されたものです。このとき水銀から紫外線も一緒に放射されますが,この紫外線が蛍光管内壁の蛍光体に当たることでいろいろな色の可視光に変換され光の帯も観察されるのです。なお,この分光器で街灯(水銀灯)の光を観察すると,蛍光灯で観察された輝線だけが観察できます。
私の研究室では,学生が講師役になって,小・中学生を対象に,このDVD分光器を作成し色々な光源からの光のスペクトルを観察する実験教室(土曜講座)を行ってきました。子どもたちはみな興味深そうに,様々な光源の光のスペクトルを楽しんで観察しています3)。
生徒各自に分光器を作らせる余裕がない場合は,教員が作った分光器の観察窓にプロジェクターにつないだスマートフォン等のレンズを近づけて,教室のスクリーンにスペクトルを大きく映し出すといった使い方もできます4)。
最後に安全上の注意事項です。太陽光を観察する場合はスリットを太陽に直接向けない,レーザー光は観察しない,という点は必ず守って観察させてください。
引用・参考文献
3) 田口 哲,並川 寛司,岡村 聰,森田 みゆき,北海道教育大学紀要(教育科学編), 56 (1) 131 (2005)
4) 田口 哲,渡辺 勤,化学と教育,50 (4) 329 (2001)
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田口 哲先生
1968年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道大学大学院理学研究科修士課程・同大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。北海道教育大学講師、准教授を経て2011年より現職。専門は物理化学、化学教育。1999〜2001年大学入試センター教科専門委員会委員、2006〜2011年大学入試センター教科科目第2委員会委員。化学教育ジャーナル(CEJ)編集委員。著書「理科教育学−教師とこれから教師になる人のために−」(東京教学社)、「解説実験書 新しい北海道の理科」(北海道教育大学)。電気化学・物理化学に関する論文、化学教育に関する論文等多数。
この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」に掲載された内容を一部改変したものです。
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