中学生エデュフル

授業力をみがく

測ることと量の表現 〜物理量=数値×単位〜(2)

理科 全学年 2019/11/12

北海道教育大学教授
田口 哲

(前回の内容はコチラ)

2 測定と物理量

 実は,量の測定の原理を最初に直接的に学ぶのは理科ではなく小学校の算数です。現行の小学校学習指導要領(算数)には「量と測定」という領域が設定されており,そのねらいとして「身の回りにある様々な量の単位と測定について理解し,実際に測定できるようにするとともに,量の大きさについての感覚を豊かにする」と解説されています。例えば小学校1年で,机の天板の縦の長さと横の長さを,鉛筆の長さを基準として(鉛筆いくつ分の長さがあるかを)測定する活動が行われます。小学校2年の教科書では,いろいろなものの長さをクリップや1円玉などを使って調べる活動のあと,長さの単位cmが導入されています。

〔えんぴつの絵〕

 物理量の測定とは,それと同一の次元(量の種類)を持つ基準の物理量との比(の数値),
   測定対象の物理量/基準の物理量=数値
を求める操作です。例示した小学校算数での長さの測定も,この比の数値を求めていることに他なりません。この基準を物理量の単位といいます。単位は,原理的には,測定対象の量と同じ次元を持っていれば何でもよいのですが,それでは人により単位(基準)がまちまちになり量の比較が困難です。そこで国際度量衡委員会は,世界で統一的に通用する国際単位系(SI)を1960年に採択し,7つの基本単位を定めました。
 ここで上式の両辺に基準の物理量(単位)をかけると
   (測定対象の)物理量=数値×単位
と変形できます。つまり測定の原理に基づいて,物理量は数値と単位の積で表さねばならないのです。ある物体の質量を「5 kg」と表記するのは(SIでは数値と単位の間に×を意味する空白を入れる約束があります),5という数の傍に単にkgを添えているのではありません。その質量はkg(国際キログラム原器の質量)の5倍,すなわち「5×kg」であることを物理量の測定原理に従って表現しているのです。


(次に続く)



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田口 哲先生
1968年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道大学大学院理学研究科修士課程・同大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。北海道教育大学講師、准教授を経て2011年より現職。専門は物理化学、化学教育。1999〜2001年大学入試センター教科専門委員会委員、2006〜2011年大学入試センター教科科目第2委員会委員。化学教育ジャーナル(CEJ)編集委員。著書「理科教育学−教師とこれから教師になる人のために−」(東京教学社)、「解説実験書 新しい北海道の理科」(北海道教育大学)。電気化学・物理化学に関する論文、化学教育に関する論文等多数。

この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」に掲載された内容を一部改変したものです。

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