授業力をみがく
平行移動に関する理解の素地形成@
平行移動に関する理解の素地形成〜比例や一次関数の学習で表づくりを工夫する〜
茨城大学教育学部 助教 荻原 文弘
1 問題の所在
高等学校数学T「二次関数」において、生徒が抱く問い「放物線y=x^2のy軸方向へ1の平行移動は y=x^2+1で “+1”なのに、なぜx軸方向へ1の平行移動はy= (x− 1)^2で“−1”なのでしょうか?」に、私たち教師はどのように応えていけばよいでしょうか。私は、高等学校数学への接続を意識しながら、比例や一次関数の学習で、工夫した表をつくり読んだり、既に学んだ事柄を積極的に学び直したりする学習・指導を通して、この「問い」に応えていました。
2 中学校での素地指導
中学校数学「一次関数」では、次のような課題解決の学習を位置付けています。
【課題1】
y− 2 はx+1 に比例し、x=− 3 のとき
y=−2 です。このとき、y を x の式で表しなさい。
多くの生徒は、この課題を次のように解決します。
〔生徒の解答〕
y−2 は x+ 1 に比例するので、
y−2 = a(x+ 1) …… @
とおける。ここで、x=− 3 のとき、y=− 2となるので、
@に x=−3 、y=− 2を代入して、
− 2 − 2 =a(− 3+ 1)
∴ a= 2
a= 2 を@に代入し、整理すると、
y− 2 = 2(x+1)
∴ y= 2x+ 4
そして、生徒は一次関数 y= 2x+4 のグラフをかくのですが、果たして、「y−2 は x+1 に比例する」ことの意味を理解しているのでしょうか。
3 式と表、グラフを関連付ける
次に、教師が「yはxに比例する」ときの性質を問うと生徒から次の性質が挙がります。
・x= 0 のとき、y= 0 である。
・xの値が2 倍、3 倍、4 倍、…… となると、yの値も2 倍、3 倍、4 倍、…… となる。
・y/xの値は、常に一定で比例定数である。
その後、教師は生徒に次の課題に取り組むように促します。
【課題2】
課題1 で得られた関数について、「y−2 は x+ 1に比例する」ことを示す表をつくりましょう。
すると、殆どの生徒は、これまでの表づくりの経験をもとに表1を完成させ、表の観察に移っていきました。

【参考文献】
高橋陽一郎 ほか(2011)「数学T」啓林館
岡本和夫・森杉馨・佐々木武・根本博 ほか(2015)「未来へひろがる数学1〜3」啓林館
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荻原 文弘(おぎはら ふみひろ)(茨城大学教育学部 助教)
長野県出身。東京理科大学理工学研究科修了。長野県内の私立中高一貫校において,28年間教鞭を執った後、2019年度より現職。
この原稿は、「学びのとびら」2020年春号に掲載された内容を一部改変したものです。
次回配信予定日:6月1日
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