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新学習指導要領で生まれ変わった「化学変化とイオン」(1)

理科 全学年 2020/7/14

北海道教育大学教授
田口 哲

 電気自動車やハイブリット自動車,さらにはモバイル端末の電源をはじめとして,化学電池の重要性は益々高まっています。中学校理科では,3年生「化学変化と電池」において化学電池は取り扱われてきました。これまで中学校理科で取り上げられてきた電池の代表例には,ボルタ型電池(うすい硫酸の中に負極として亜鉛板,正極として銅板が浸漬:図1)や備長炭電池(食塩水で湿らせたキッチンペーパーに,負極としてアルミニウムはく,正極として備長炭が接触:図2)が挙げられます。

図1:ボルタ電池  図2:備長炭電池

 これらの電池は,(1)実験が手軽にできる,(2)電極での変化が比較的見えやすく化学エネルギーが電気エネルギーに変化していることを感覚的に理解しやすい,という利点がありました。例えば,備長炭電池のアルミニウムはく(負極)には使用後に多数の小さな穴が空くので,負極が反応したことが一目瞭然でした。しかしこれらの電池には,以下の課題がありました。

・電極反応が複雑で扱いにくい:ボルタ電池では正極だけでなく負極でも水素が発生。備長炭電池では正極(炭素極)で空気中の酸素と水と電子が反応し水酸化物イオンが生成。

・学習指導要領解説に例示されている「電極の面積や電解質溶液の濃度が電圧や電流に与える影響」を調べる探究活動は,その影響が電池の内部抵抗に関わるため,実験結果を小・中学校理科の既習事項と結びつけて考察するのは難易度が高い。


 令和3年度から全面実施される新中学校学習指導要領では,「化学変化と電池」は大きく改訂され,電池の仕組みを深く理解できるようになりました。具体的には,これまで高等学校理科での学習事項であった「ダニエル電池」が中学校理科の学習事項になりました。
 次回は,新たに中学校理科で扱われるようになったダニエル電池について解説します。

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田口 哲 先生
1968年北海道生まれ。北海道教育大学卒業。北海道大学大学院理学研究科修士課程・同大学院地球環境科学研究科博士課程修了。博士(地球環境科学)。北海道教育大学講師,准教授を経て2011年教授,2019年から札幌校キャンパス長。専門は物理化学,化学教育。1999〜2001年大学入試センター教科専門委員会委員,2006〜2011年大学入試センター教科科目第2委員会委員。化学教育ジャーナル(CEJ)編集委員。著書「理科教育学−教師とこれから教師になる人のために−」(東京教学社)「解説実験書 新しい北海道の理科」(北海道教育大学)。電気化学・物理化学に関する論文,化学教育に関する論文等多数。

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