中学生エデュフル

授業力をみがく

中学英語のポイント

英語 全学年 2019/11/12

関西大学/大学院 教授 田尻悟郎


 前号では、中学校では3層構造を持つ英文が理解できるかどうかが高校での英語学習の成果を左右するポイントであると述べました。3層構造とは、複文の従属節の中にもう1つ節が含まれているもので、不定詞句も1つの層と見なします。
 中1では単文を学習します。例えば「私は毎日図書館で一生懸命英語を勉強しています」という文をセンスグループに分け、それを英語の語順に並べ替えることができる力をつけるのが大きな目標の1つとなります。
 日本語の文をセンスグループに分けるときは、「ネ」を入れさせます。すると、先ほどの文は次のように分けられます。

「私はネ/毎日ネ/図書館でネ/一生懸命ネ/英語をネ/勉強していますネ」

 次に、最後の部分に注目させます。最後が「勉強しています」という動詞であり、「英語を」という目的語がありますから、この文はSVOの文型であり、動詞の部分に「勉強している」が来ることが分かります。あとは英文の語順にしたがって日本語のセンスグループを並べ替えていきます。

『だれ何が/は(S)』 私は
『どうする(V)』   勉強している
『だれ何を/に(O)』 英語を
『どのように』    一生懸命
『どこ』       図書館で
『いつ』       毎日

 最後にこれを英語に直すと、I study English hard in the library every day. という英文が完成します。

 中2では、目的語と補語の場所のthat+節、理由を表すbecause+節、時を表すwhen+節、条件を表すif+節という4種類の複文を学習し、中2または中3で学習する現在完了ではsince+節という5つめの複文を学習します。複文には従属節がありますが、これは文の中に文がある形であり、イタリアという国の中にバチカン市国というもう1つの国がある状況に似ています。
 「私は英語の先生になりたいので毎日図書館で一生懸命英語を勉強しています」という文は、先ほどの文に「英語の先生になりたいので」という部分が加わったものであり、次のような構造になっています。

『だれ何が/は(S)』 私は
『どうする(V)』   勉強している
『だれ何を/に(O)』 英語を
『どのように』    一生懸命
『どこ』       図書館で
『いつ』       毎日
『なぜ』     英語の先生になりたいので

 「ので」はbecauseであり、「英語の先生になりたい」という部分を拡大してみると、以下のようなSVOの構造になっています。

『だれ何が/は(S)』 私は
『どうする(V)』   望んでいる
『だれ何を/に(O)』 英語の先生になることを

 この部分の目的語『だれ何を/に』は「英語の先生になることを」ですが、これは不定詞句で表します。接続詞のあとはSVOやSVCなどの文がきますが、不定詞はSが省略されて、to以下にVOやVC, VOO, VOCなどがきます。「英語の先生になること」は文字通り「なる」ことが目的ではなく、「長く英語の先生であること」を望んでいるわけですから、「英語の先生であること」とします。これはVCの構造を持っています。

『だれ何が/は(S)』 省略
『イコール(V)』   to+であること
『だれ何(C)』 英語の先生

 こう考えると、この文は「主節+従属節(不定詞句を含む)」という3層構造を持った文と言えます。
中3ではさらに後置修飾を学習しますので、「英語の先生」に「(もう少し詳しく説明するとその人は)どんな質問にも答えられる」などと修飾語を加えたものを英文に直す力をつけてやらなければなりません。この場合、目的語(『だれ何を/に』)の場所に、もう1つ文が加わる、すなわち4層目の文が加わるのです。

『だれ何が/は(S)』 もう少し詳しく説明するとその先生は
『どうする(V)』   答えられる
『だれ何を/に(O)』 どんな質問にも

 これが中学校英語の肝であり、このような文構造が分かってこそ、高校の教科書が理解できるようになるのです。



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田尻悟郎先生
1981年 島根大学教育学部中学校教員養成課程英語科卒業
1981年4月〜 神戸市・島根県の中学校に勤務
2001年10月 (財)語学教育研究所よりパーマー賞受賞
2003年〜 英語教員指導力向上研修講師
2007年〜 関西大学 外国語教育研究機構 教授
2009年〜 関西大学 外国語学部 教授
     関西大学中等部・高等部 校長を兼任
     (2017年4月〜2019年3月)
著書多数,テレビなど多方面で活躍中。

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