授業のワンポイント
身のまわりの物質は何から成り立っているか
■炭酸水素ナトリウムを加熱したときの変化
重曹の別名である炭酸水素ナトリウムを加熱し,そのときに発生する気体をいろいろな方法で調べさせ,その気体が何であるかを考えさせます。さらに,炭酸水素ナトリウムを加熱すると,もとの性質とは性質の異なる別の物質に分かれることを,生徒に見いださせます。
まずは,教科書を参考にして実験装置を組み立てますが,その際に留意点がいくつかあります。実験を行うとき,加熱により生成した水が,試験管の加熱部分に流れ込み,試験管が急激に冷やされて割れることがあります。これを防ぐために,試験管の口が少し下を向くように装置を組み立てます。口を下げ過ぎると,試験管内の炭酸水素ナトリウムが底から口のほうに移動してきてしまうので,水平より少し傾ける程度でよいでしょう。
また,気体誘導用のゴム管が折れ曲がらないように注意します。ゴム管が折れ曲がっていると,発生する気体が加熱している試験管から出ることができないため,内部の圧力が高くなり,ゴム栓つきガラス管が吹き飛ばされることがあります。そのため,実験中はゴム管が折れ曲がっていないか,点検しましょう。
続いて,教科書の手順に従って3本の試験管に発生した気体を入れ,それぞれの試験管をA〜Cとします。試験管Aには石灰水を入れて振り混ぜ,試験管Bにはマッチの火を近づけ,試験管Cの中には火のついた線香を入れて,それぞれの試験管における反応を観察します。観察した結果から,発生した気体は何であったのか,生徒に考察させましょう。
■水に電流を流したときの変化
加熱だけでなく,電流を流すことによっても物質を分解できることを見いださせます。具体的には,水を電気分解すると水素と酸素が発生することに気づかせます。
教科書と同様に実験装置をつくります。実験で用いる簡易型電気分解装置の背面には穴が空いていますが,実験中はこれをふさがないように注意させます。背面の穴をふさいでいると,必要以上に水素や酸素を発生させたとき,背面で水素と酸素が混合し,誤って背面の穴に点火したときに思わぬ事故が起こる可能性があります。なお,この電気分解装置では,生徒が誤ってゴム栓で背面の穴をふさいでも,気体が逃げるように工夫されています。
水溶液の濃度や量は実験を安全に進めるために配慮したものです。生徒に水溶液の調製をさせることは避けましょう。
簡易電気分解装置に水溶液を入れたのち,電気分解を行いますが,このときの電圧は6Vで十分です。過度な気体の発生や感電などを避けるため,電圧は6Vより大きくしないようにしましょう。
気体が発生してから確認をしますが,確認するときは,必ず電気分解装置の電源を切ってから行うようにさせます。観察するときは,顔を近づけすぎたり,上からのぞいたりしないように指導しましょう。また,水酸化ナトリウム水溶液の扱いにはくれぐれも注意させ,必ず保護眼鏡を着用させるようにします。
実験中に装置を倒して,装置内の水酸化ナトリウム水溶液がこぼれる可能性があります。そのため,装置の下にプラスチックのバットを敷いておくとよいでしょう。
陰極と陽極で発生した気体の量を確認し,それぞれの極で発生した気体が何であるのか,生徒に考察させましょう。以下に結果の一例を示します。

電気分解装置に施されている工夫

実験結果の一例
[物質]化学変化と原子・分子
1章 物質の成り立ち(教科書p.142〜154)
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