中学生エデュフル

授業力をみがく

AIが作る定期テスト

その他 全学年 2024/6/25

大垣女子短期大学 幼児教育学科 講師 岡本 英通


 皆さん、こんにちは。大垣女子短期大学で研究をしている岡本と申します。
 近年、AIの進化は目覚ましいもので、AIの技術革新により、教育の現場にも影響があります。文部科学省も「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を示していますね。そこには、「教員研修や校務での適切な活用に向けた取組を推進し、教師のAIリテラシー向上や働き方改革に繋げる必要がある。」とありました。これは、ごもっともな意見だと思います。

 4年前、私が中学校で数学教諭として働いていたときにもAIはありました。しかし、AIは研究者や技術者の扱うもので、身近なものではありませんでした。成績処理をするときも、Excelを使い、自分で1から関数を書いていました。やっと書けたと思い、動かそうとするとエラーが出た時には、「どこが間違っているんだ!」とイライラしながら、何時間もExcelと格闘していました。それが、今はどうでしょう。「ChatGPT」をはじめ、「Copilot」や「Monica」といった高性能なAIツールが無料で使えるのです。ChatGPTに「成績処理をするためにExcelの関数を書いて。」とお願いするだけで、すぐに正しい関数を出してくれます。もちろん、条件を細かく与えないと自分がしたい成績処理をするための関数はつくってくれません。それでも、効率的なのは明らかです。

 ほかにも、私は定期テストの作成にかなりの時間をかけていました。テスト作成によって自分自身の数学の力もつきましたし、生徒の能力を考えながら作成するため、自分の授業へのフィードバックにもなっていました。その一方で、「テスト作成が大変」という気持ちもありました。最近では、問題作成ソフトを使ったり、テスト作成を業者に委託したりすることも増えてきたようです。しかし、それらはコストがかかります。そこで、「無料のAIでテスト作成ができるのか。」と思い、試してみました。
 今回使用するAIは、マイクロソフトが開発した「Copilot」というツールです。まず初めに、「中学3年生の因数分解の問題を出してください。」とお願いしてみました。

 ものの10秒で、6つもの問題をつくってくれました。さらに、「答えの解説もつけてください。」と指示すると、問題の解法を細かく示してくれるのです。この調子で、図形の問題もお願いしてみましょう。「中学2年生の『合同な図形』の証明問題を、図をつけて出題してください。」と入力すると、次のような問題と図が出てきました。

 「証明」という言葉が出てきますが、私が想像していた「合同条件を用いて合同な図形の証明をする問題」は出てきませんでした。しかも、図は全く関係ない図形が示されています。うまく表示されるように、いろいろと指示をしてみましたが、だめでした。

 このように、AIはまだまだテスト作成を全自動でしてくれるわけではないようです。しかし、AIがテスト作成をすべてしてくれる日は、そう遠くないでしょう。もしかすると、この記事を書いている今はこの結果でも、皆さんがこの記事を読む頃には、既にAIが学習を進めていて、良問を作成するようになっているかもしれません。
 では、私たちに求められる能力は何なのでしょうか。その1つに、「AIが生成したものを見て、何が最適かを判断できる能力」というものがあると考えます。AIが生成したものの真偽も含め、何が児童生徒によって適しているのかを考えられることが、今後必要になると思います。AIにすべてを丸投げするのは、教育を放棄しているとも言えます。子どもと向き合う時間を増やし、その子の学びを促すものは何かを考えるためにAIの助けを借りるというのが、AIの理想的な使用方法ではないでしょうか。


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岡本 英通(おかもと ひでみち)
1993年生まれ
岐阜県内の公立小・中学校(数学科)を通算で4年間、教諭として勤務
2018年 岐阜大学大学院 教育学研究科総合教科教育専攻 サイエンスコース 数学(修士課程)修了
2023年 カールスルーエ教育大学(原文: Padagogische Hochschule Karlsruhe, ドイツ) 自然社会科学数学科後期課程修了
2023年 博士(哲学)カールスルーエ教育大学
現 職 学校法人大垣総合学園 大垣女子短期大学幼児教育学科 講師
専 攻 数学教育学,創造性・創造的思考,遠隔協働学習


※Padagogische Hochschule Karlsruheの“Padagogische”のはじめのaは上部に‥がついたもの。文字化けを避けるためこの表記にしております。

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