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中高連携へのいざない〜もう少し遠くまで見通した指導のすすめ〜 @

数学 全学年 2021/2/2

文教大学教育学部 教授 永田 潤一郎

1 はじめに

 「中高連携について考えてみましょう」などと言うと、「ウチは普通の中学校で、中高連携とは縁がありませんから…」といきなり会話を拒否されるかもしれませんね。日本の学校教育では、平成11年度から中高一貫教育を選択的に導入することが可能となりました。1つの学校として一体的に中高一貫教育を行う「中等教育学校」をはじめ、併設型や連携型の中学校・高等学校が公立学校として全国に広がりつつあります。こうした制度の重要性は十分に理解していても、直接関わりを持たない教師にとって、中高連携について考えることは意外に敷居が高く、面倒なことかもしれません。でも、安心してください。ここで取り上げようとしているのは、こうした制度としての中高連携について理解を深めようという話ではありません。中学校で指導している数学の延長線上にある高等学校の数学について、教える者の立場からもう少し気軽に考えることで中学校と高等学校の数学のつながりを意識してみませんか…という提案です。

2 中高連携の視点@教科目標の連続性

 ところで、なぜ今、「中高連携」なのでしょうか。既にご存じのとおり、新しい学習指導要領では、幼児教育から高等学校教育までを通して、育成すべき資質・能力が三つの柱に沿って整理されました。これを受けて、新しい学習指導要領では、算数・数学科の教科目標も、小・中・高等学校を通じて、「知識及び技能」、「思考力・判断力・表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の3項目で再構成されました。このことは、「算数・数学科の指導を通して何を目指すのか」という教科指導の目標の視点から、中学校と高等学校の学びの連携・接続が従来以上に捉えやすくなったことを意味しています。
 こうした新しい学習指導要領の考え方を受けて、これからの算数・数学科の指導では、学校段階ごとの特徴は従来通り大切にしながら、前の学校段階での教育が次の学校段階で生かされるように、学びの連続性を確保することが一層求められるようになってきているのです。

3 中高連携の視点A数学的活動の充実

 また、新しい学習指導要領で重視されている「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、算数・数学科では数学的活動の一層の充実が求められています。前述した教科目標でも、その実現は「数学的活動を通して」なされることが柱書に明記されています。これについて、「中学校学習指導要領解説 数学編」では、「算数科・数学科において、このような数学的活動は、小・中・高等学校教育を通じて必要なもの」と位置付けられており、学校段階を超えて重視されているのです。このように、教科目標の構成だけでなく、それを実現するための指導についても、中学校と高等学校の間では、数学的活動をキーワードとした一層の連携が求められています。


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永田 潤一郎(ながた じゅんいちろう)(文教大学教育学部 教授)

千葉大学教育学部附属中学校,千葉県立千葉南高校教諭を経て,文部科学省初等中等局教育課程課教科調査官として学習指導要領の改訂や評価規準の作成等を担当するとともに,国立教育政策研究所で教育課程調査官・学力調査官を歴任。

この原稿は、「学びのとびら」2020年春号に掲載された内容を一部改変したものです。

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