授業力をみがく
数学的に考えることができる授業の実現に向けて(2)
宇都宮大学准教授
牧野 智彦
2 「記録」とその機能
生徒の思考を可視化するツールに,「記録」の利用があります(リチャート,チャーチ,モリソン,2015)。「記録」は,単に,クラスがやった結果を書き留めることではなく,学習のプロセスそのものに焦点を当てて,学習の流れの中での出来事,質問,やりとり,行動を捉えたものです。「記録」として,黒板に書かれたクラスの探究の記録,ディスカッションの録音,生徒のアイディアや意見が書かれたノート等が例示されています。
思考の流れを描く「記録」によって,生徒も教師も,学習のプロセスと成果を振り返ることができ,それらについて話し合って検討することもできます。このように,「記録」は,学習を深めたり,進めたりするための振り返りの重要な情報源となります。
生徒の学習プロセスを「記録する」ために,教師は,授業中の生徒の思考や行為を注意深く観察し,その意味を丁寧に「聞く」ことが必要になります。
(次回へ続く)
引用・参考文献
・リチャート,チャーチ,モリソン(2015).『子どもの思考が見える21のルーチン』(黒上晴夫・小島亜華里訳).北大路書房.(R.Ritchhart,M.Church&K.Morrison,(2011).Making Thinking Visible.John Wiley&Sons.)
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牧野 智彦先生
1973年群馬県みなかみ町出身。群馬大学教育学部数学科,筑波大学大学院修士課程教育研究科,筑波大学大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。国立教育政策研究所教育課程研究センター,上武大学を経て,2010年より現職。主な出版物は,『教科教育の理論と授業U:理数編』(大熕・清水美憲編著,分担執筆,協同出版,2012年),『教科教育学シリーズB算数・数学科教育』(藤井斉亮編著,分担執筆,一藝社,2015年)。
この原稿は,「理数啓林 授業力をみがく」に掲載された内容を一部改変したものです。
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